関節リウマチ

関節リウマチとは?

関節リウマチは、本来は体を保護する役割を果たす免疫系が誤って自身の正常な細胞を攻撃してしまう免疫疾患です。この病気の引き金となるのは遺伝子や環境要素などの何らかの刺激で、これにより免疫細胞や滑膜内の細胞から炎症性の物質であるサイトカインが放出され、それが炎症細胞を刺激し、さらにサイトカインが放出され続けることで関節炎が引き起こされます。さらに、破骨細胞の増殖によって骨の破壊が引き起こされます。日本では、人口の0.6~1.0%、つまり約70万~90万人が関節リウマチを患っていると推定されています。

関節リウマチの遺伝性

関節リウマチの発症原因は遺伝的な要素と後天的な要素が混ざり合っています。親がリウマチであっても、必ずしもその子供がリウマチになるわけではありません。実際、リウマチ患者の親族のうち、リウマチ患者である確率は約9.8%です。つまり、親がリウマチであっても、その子供のうち約90%はリウマチにならないということです。ただし、リウマチのいる家族は、リウマチのいない家族に比べて、リウマチになる確率が約3.6倍高いという研究結果もあります。

遺伝性が影響を及ぼすとは言え、リウマチは特定の遺伝子(例えばHDR-DR4など)を受け継ぐことが発症の直接的な原因とはならない複雑な疾患です。実際、この遺伝子を持っていてもリウマチを発症しない人、または逆にこの遺伝子を持っていなくてもリウマチを発症する人が存在します。リウマチの発症には少なくとも30個以上の関連遺伝子が関与していると考えられており、これらの遺伝子が複雑に組み合わさることでリウマチが発症します。たとえて言うならば、まるで宝くじの十桁の数字が運悪く当たってしまうようなものです。

関節リウマチの発症原因

関節リウマチは多因子疾患と言われ、特定の一つの要因だけでなく、様々な要素が複雑に絡み合って発症します。特に、出生後に影響を受ける後天的な要素が大きな影響を及ぼすと考えられています。喫煙や歯周病は関節リウマチと密接に関連しており、また口腔内や腸内細菌叢の変化も注目されています。これらの後天的な要素と先天的な遺伝因子が組み合わさることで、リウマチになりやすい体質が形成されます。特に家族にリウマチ患者がいる場合、可能な限りリウマチの発症につながる環境要素を避けることが重要です。

リウマチの主な検査

病歴と身体検査
  • 患者の症状や健康状態についての詳しい問診が行われます。身体検査では、医師が関節の腫れ、痛み、または硬直を評価します。
■血液検査
  • リウマチ因子(RF):これは関節リウマチを示す可能性がある抗体です。しかし、リウマチ因子は他の病状でも上昇することがあり、また全ての関節リウマチの患者で上昇するわけではないため、診断はこれだけで決まるものではありません。
  • 抗サイクリックシトルリンペプチド抗体(anti-CCP):これも関節リウマチの特異的なマーカーで、早期診断に役立つことがあります。
  • C反応性蛋白(CRP)と速やかな血液沈降速度(ESR):これらのマーカーは体内の炎症を示します。
■画像検査
  • X線や超音波、MRIなどが用いられます。これらの検査は関節の損傷を直接視覚化し、疾患の進行度を評価します。

治療薬について

関節リウマチの治療は、長い歴史を経て、多種多様な薬剤が開発されてきました。

紀元前500年には、ヤナギの木の皮から得られる成分「サリチン」が痛み止めとして使用されていました。そして1897年にはアスピリンが登場し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われるようになりました。これらは痛みを軽減し、炎症を抑える効果があります。

ステロイド剤について

1950年代にはステロイドが登場しました。これは、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を有する薬で、一晩で歩けるようになるほど劇的な改善をもたらしました。しかし、使用には副作用が伴うため、その後の研究により適切な使用量が確定され、現在では補助的に使用されています。

免疫調整薬とMTX

サラゾスルファピリジン(SASP)などの免疫調整薬が開発され、次いで日本では1999年にメトトレキサート(MTX)が登場しました。MTXは、もともとは腫瘍の治療に使われていた薬で、少量でも関節や骨の破壊を抑制する効果があります。これにより、関節リウマチの第一選択治療薬となりました。

生物学的製剤の登場

1998年(日本では2003年)には、生物学的製剤が登場しました。これは免疫細胞やサイトカイン、サイトカイン受容体を標的にする薬で、関節炎を速やかに抑え、骨破壊の進行を抑える効果があります。現在では8種類が利用可能で、MTXと併用することで効果を高めることができます。

JAK阻害薬

最近では、生物学的製剤と同等の効果を持つ飲み薬、JAK阻害薬が開発されました。これは、一種類のサイトカインではなく、多くの炎症性サイトカインを生み出す細胞内伝達経路をブロックし、炎症を抑える効果があります。ただし、これらの薬は免疫を抑制するため、感染症への注意が必要で、特に帯状疱疹のリスクが高まります。そのため、50歳以上の患者には帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。

このように、関節リウマチの治療薬は長い年月をかけて進化を続けています。