リウマチ科
リウマチ科では、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患による関節の痛みや腫れ、こわばりなどの症状を診療しています。関節リウマチは、免疫系が自身の正常な細胞を攻撃することで関節に炎症を引き起こす疾患であり、早期の診断と治療が重要です。
関節リウマチとは?
関節リウマチは、本来は体を保護する役割を果たす免疫系が誤って自身の正常な細胞を攻撃してしまう免疫疾患です。この病気の引き金となるのは遺伝子や環境要素などの何らかの刺激で、これにより免疫細胞や滑膜内の細胞から炎症性の物質であるサイトカインが放出され、それが炎症細胞を刺激し、さらにサイトカインが放出され続けることで関節炎が引き起こされます。さらに、破骨細胞の増殖によって骨の破壊が引き起こされます。日本では、人口の0.6~1.0%、つまり約70万~90万人が関節リウマチを患っていると推定されています。
主な症状
- 関節の腫れや痛み
- 朝のこわばり
- 全身の倦怠感 など
診断方法
- 病歴と身体検査
- 患者様の症状や健康状態について詳しくお伺いし、関節の状態を評価します。
- 血液検査
- リウマチ因子(RF)や抗CCP抗体、炎症の指標であるCRPなどを測定します。
- 画像検査
- X線や超音波、MRIなどを用いて関節の損傷や炎症の程度を確認します。
リウマチの血液検査項目
- RF:リウマチ因子
-
リウマチの重症度と関連。数字が高いほど重症化しやすい。治療とともに低下することがある。
- 抗CCP抗体
-
リウマチの重症度と関連。数字が高いほど重症化しやすい。治療とともに低下することがある。測定回数に制限がある、基準値以上の際には95%が発症。
- CRP
-
今の関節滑膜の炎症の強さを示す。リウマチの治療の効果と症状のコントロールに使う。
治療薬での副作用が、きていないか見ていく項目
- 骨髄(血球計算WBC:白血球, RBC:赤血球,Plt:血小板)
- 肝臓(ALT,AST,γGTP)
- 腎臓(BUN, Cr,尿検査)
- 肺 (KL-6)
感染症が起きてないか見ていく項目
- 真菌(カビ)感染:β-Dグルカン)
- 結核感染 :T-SPOT/クオンティフェロン
- ウィルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎):HBs抗原・HCV抗体
その他の項目
- 抗核抗体
-
リウマチ患者の20-30%で陽性。多くの膠原病で陽性にあり、診断の初期に行う。
- TSH
-
甲状腺の状態を確認。
- IgE
-
アレルギーの状態を確認。
リウマチ因子(RF)陽性について
リウマチ因子(RF)のテストが陽性となったとしても、必ずしもリウマチとは限りません。健康な人でも、約3%が陽性となります。特に、高齢者や女性では陽性率が更に高くなります。一方で、実際にリウマチを患っている人の中でも、全員がリウマチ因子陽性となるわけではなく、発症時において約70%の人が陽性となります。
陽性判定後のアクション
リウマチ因子陽性であっても、すぐに治療を開始する必要はありません。特に、関節の症状が全くない場合は、そのまま様子を見ることが推奨されます。一方、関節痛や他の症状がある場合は、リウマチに進行する可能性を調べるために、リウマチ専門医で抗CCP抗体の検査を受けることを検討してください。
治療に備えて
リウマチの治療が必要となる可能性を前提として、家族・親戚に同じ症状の人がいないかをを確認したり、以前にも同じ症状(誘因のない関節痛など)がなかったかを確認しておくと良いでしょう。
また手洗いうがいの励行で感染症を予防しましょう。これは、リウマチの治療薬であるMTXの副作用を軽減するためです。
治療内容
- 薬物療法
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、メトトレキサート(MTX)、生物学的製剤、JAK阻害薬などを使用し、症状の進行を抑えます。
- 生活指導
- 日常生活での工夫やセルフケアのアドバイスを提供します。
関節リウマチの治療薬
紀元前500年には、ヤナギの木の皮から得られる成分「サリチン」が痛み止めとして使用されていました。そして1897年にはアスピリンが登場し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われるようになりました。これらは痛みを軽減し、炎症を抑える効果があります。
ステロイド剤について
1950年代にはステロイドが登場しました。これは、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を有する薬で、一晩で歩けるようになるほど劇的な改善をもたらしました。しかし、使用には副作用が伴うため、その後の研究により適切な使用量が確定され、現在では補助的に使用されています。
免疫調整薬とMTX
サラゾスルファピリジン(SASP)などの免疫調整薬が開発され、次いで日本では1999年にメトトレキサート(MTX)が登場しました。MTXは、もともとは腫瘍の治療に使われていた薬で、少量でも関節や骨の破壊を抑制する効果があります。これにより、関節リウマチの第一選択治療薬となりました。
生物学的製剤の登場
1998年(日本では2003年)には、生物学的製剤が登場しました。これは免疫細胞やサイトカイン、サイトカイン受容体を標的にする薬で、関節炎を速やかに抑え、骨破壊の進行を抑える効果があります。現在では8種類が利用可能で、MTXと併用することで効果を高めることができます。
JAK阻害薬
最近では、生物学的製剤と同等の効果を持つ飲み薬、JAK阻害薬が開発されました。これは、一種類のサイトカインではなく、多くの炎症性サイトカインを生み出す細胞内伝達経路をブロックし、炎症を抑える効果があります。ただし、これらの薬は免疫を抑制するため、感染症への注意が必要で、特に帯状疱疹のリスクが高まります。そのため、50歳以上の患者には帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。
このように、関節リウマチの治療薬は長い年月をかけて進化を続けています。
関節リウマチの遺伝性
関節リウマチの発症原因は遺伝的な要素と後天的な要素が混ざり合っています。親がリウマチであっても、必ずしもその子供がリウマチになるわけではありません。実際、リウマチ患者の親族のうち、リウマチ患者である確率は約9.8%です。つまり、親がリウマチであっても、その子供のうち約90%はリウマチにならないということです。ただし、リウマチのいる家族は、リウマチのいない家族に比べて、リウマチになる確率が約3.6倍高いという研究結果もあります。
遺伝性が影響を及ぼすとは言え、リウマチは特定の遺伝子(例えばHDR-DR4など)を受け継ぐことが発症の直接的な原因とはならない複雑な疾患です。実際、この遺伝子を持っていてもリウマチを発症しない人、または逆にこの遺伝子を持っていなくてもリウマチを発症する人が存在します。リウマチの発症には少なくとも30個以上の関連遺伝子が関与していると考えられており、これらの遺伝子が複雑に組み合わさることでリウマチが発症します。たとえて言うならば、まるで宝くじの十桁の数字が運悪く当たってしまうようなものです。
関節リウマチの発症原因
関節リウマチは多因子疾患と言われ、特定の一つの要因だけでなく、様々な要素が複雑に絡み合って発症します。特に、出生後に影響を受ける後天的な要素が大きな影響を及ぼすと考えられています。喫煙や歯周病は関節リウマチと密接に関連しており、また口腔内や腸内細菌叢の変化も注目されています。これらの後天的な要素と先天的な遺伝因子が組み合わさることで、リウマチになりやすい体質が形成されます。特に家族にリウマチ患者がいる場合、可能な限りリウマチの発症につながる環境要素を避けることが重要です。
当院では、患者様一人ひとりの症状や生活環境に合わせた治療方針を提案し、生活の質(QOL)の向上を目指しています。リウマチに関する疑問や不安がある方は、お気軽にご相談ください。スタッフ一同、安心して治療を受けていただけるようサポートいたします。